先日書籍「Rainy Day」を4月に発売予定と告知しましたが、既に著者をご存知のごく少数の方以外「Rainy Dayってなんだ?」、「麗兄って誰だ?」という皆目見当のつかない状態と思いますので、ここで本の内容をご紹介します。
「Rainy Day」は著者サイトに書かれた身辺雑記とエッセイを元に構成された本で、巷にあふれるだけあふれているいわゆるブログ本です。そう書くと書籍化するくらいなのでどんなに人気サイトなのかと考える方もおられるかもしれませんが、固定読者はそれなりにいるとも思うものの、アクセス数はおそらくそれほどのことはなく、日にせいぜい2桁とかそのくらいじゃないかと思います。
そもそも書籍化にあたりアクセス数を数えたことはないです。大体私は人気サイトが面白いと思ったことはほとんどなく、特に文章のサイトということで言えば、自分のサイト以外を面白いと思うことはほとんどありません。まあそれは措くとして、有名人でもない一般市民の身辺雑記が果たして面白いのかという疑問があるでしょうが、正直言って面白いです。しかし人それぞれなので面白いと思わない方が大勢いると思います。むしろつまらない・興味が湧かない・意味が分からないと思われる方が大多数であってこそわざわざ自費で書籍化する意味があるというものです。
文章のサンプルとかはアマゾンに登録した後そちらにでも載せることにしますが、ここではネタバレにならない程度にどのへんが優れているかを追ってみることにします。まずとっかかりとしては著者の人となりなので、本にも載せた著者略歴を紹介しますが、これがまた細かい字でまるまる1ページあります。老眼気味の人にもやさしい書籍・やさしいサイトを目指している紳士淑女舎ではありますが、著者略歴が何ページもあるのもどうかと思い、文字を小さくして対応しました。小さくしたけれどもそれでも1ページに収まらず、最初にもらった原稿からやむなく2割ほど削らせてもらいました。
略歴
赤子期
- 生後間もなく両親離婚のため母方の祖母に引き取られ育てられることに。
少年期
- 両親からの援助はなく年金受給月額3万円の祖母に育てられる。
- 家賃月額750円の家で15才まで暮らす。
- 「欲しがりません勝ったとしても」をスローガンに生きる。
- 小学校高学年の頃からカブトムシを捕って売って得たお金で欲しい物(ワープロ、CDプレーヤー、ビデオデッキ等)を買う。
思春期
- 高校進学に際し父方の祖母に学費援助を求めるがきっぱりと断わられる。他の孫達には100万円単位のお祝いをしていたことを知り無情を感じる。
- 高校入学と同時にスーパーでバイトを始め卒業までほぼ毎日休みなく働き続け学費や生活費を稼ぎ出す。
- 視力が落ちるが貧乏でメガネが買えずある時見かねた親戚に買ってもらう。既に視力は0.1。
- 実母4度の離婚により苗字が2度変わり学校生活で苦労する。
- バイト先に実母が金をせびりに来る。「産んでやったのだから貸せ」とバイト代3万円を持っていかれる。
青年期
- 1年浪人し(と言っても殆ど毎日バイト生活)なんとか4流大学に合格。
- バイト仲間の付き合いで買った馬券で万馬券を2回立て続けに取りその金で運転免許証を取得。
- 大学入学と同時にビジネスホテルのフロントのバイトと家庭教師のバイトを始める。
- ビジネスホテルにも実母は現れ「金を貸せ」と次年度の学費として貯めていた20万円を持って行かれる。
- 19才で初めて実父と会う。が、再会から1年後「来年の学費は心配しなくていいよ」という言葉を残し事故で突然他界。
- 父の他界により少額ではあったがお金が入る。来年の学費の足しにと思ったのも束の間、半分近くを関係のない実母に持っていかれる。
- 父の他界から2週間後、友達とヨーロッパ放浪の旅に出て列車でドイツ、スイス、フランスを3週間かけ周る。
成人後
- 卒業旅行に友達と継母(実父の再々婚相手)と3人で再びヨーロッパ7ヶ国を旅する。
- 大学卒業と同時に燃え尽き症候群に。就活一切せず卒業後約半年間のフラフラ生活。
- その後とある会社に2年間勤務し営業として各地を回る。
- 1999年2月、同年7月に空から恐怖の大王が降ってくることを信じ会社設立。代表取締役に就任。
- 1999年8月、「大王はまだか?」と大空を見上げる。恐怖だけ降ってきた結果に驚く。
- 会社は儲からず中国雑技団ばりの妙技で一輪車操業を続け現在に至る。実質は代表戸締り役。
略歴を見るとこれをそのままドラマとかにしたとしても「ベタな」と言われかねない華やかさです。出自の不幸の度合いにおいて。私もそれまでサイトの文章を流し読みしてヘラヘラ面白がってはいたものの細かく読んだことはなく、今回初めて大人になるまでのところを読んで、こんなに苦労しているのかとの感慨を持ちました。これほどのことがあったのなら、多少人格破綻気味でもしょうがないなとヘンに納得したりしたものです。「だから、あなたも生きぬいて」の大平光代なんかもかなり華やかですが、逆境からの一発逆転、成功物語みたいなところがあるでしょう、読んでませんが。「苦労はしてきたけれども、努力によって克服しました、だからあなたもがんばっていれば何かいいことがあるんですよ」という人生応援スタイルの本じゃないかと思うのですよ、読んでませんが。
「Rainy Day」は人生応援しません。まあ「しません」とまで言い切ると若干誇張気味ですが、そもそも著者は逆境を克服して一発逆転してません。逆境を克服しようとしても実際マイナスが大きすぎてどうしようもなくなんとかレベルを保っている、あるいは逆境の中で微妙に逆境度を強めて行っている、そんな話です。話と言っても本人には単なるストーリーではなくて人生なので、普通なら笑えない話です。しかし語り口が明らかに狙っている文体なので、半分面白がっているんじゃないかというふうに読めます。ある意味生活そのものがネタの宝庫という状態ですが、全然うらやましくないです。
まあうらやましいところも僅かにはあって、比較的モテの傾向はあるようです。世間一般で普通くらいなのかもしれないし、本人は全く気にしてないのですが、持っているものは気付かないという話です。中年童貞でこそないものの昨年あたり僅かに世間の話題となったその単語にビビッと反応した自分からしたらモテと言っても過言ではない。しかし「オレってモテ」みたいな話はさっぱり出てこない。これはこれで生活の不幸がモテを打ち消してあまりあるものとも言えますが、単にモテが主題の本じゃないってことです。
私なぞが読んで感じるのは「親はなくても子は育つ」とかたまに言いますが、ある意味そうなのかも、ということです。著者は父親を早くに亡くし、母親に引き取りを拒絶され(たのかどうかよく分からない)、祖母に育てられたのですが、多少の偏見・狡猾さ・ヒモ体質などあるものの、そうした出自にもかかわらず、(私と比較して)極めて社会的なバランスの取れた人格を形成しました(学者か、おれは?)。また、皮肉度合いの強いユーモアのセンスも伺えます。親がきちんとしていても、または厳格であったが故に、無差別殺人魔になるとか戸川純になるとかいうことがある一方、親がいなくても(厳密には母親はいるのだが育てていないということで)概してまともな人間は育つのだなあと上から目線で感心しました。学生時代からバイトとかをして社会に接していたし、自分がしっかりしなければいけないという立場に早くに覚醒したとかいうように理由を書くことは簡単ですが、大げさに書くと環境という原因と人格という結果の関連性を謎めいた複雑なものにして楽しんでいる神様の壮大な実験を見ているようです。本を読むとどこがまともに育ったなのかと思うかもしれないですが。あ、あんまり本の紹介になってないですか。ごめん。
本人も「どう読もうが読む側の自由」みたいなことも書いてますが、たいていこれを読んだら「自分でなくてよかった」と思い「自分の人生も捨てたもんじゃないな」と思えるのでは。そういうまわりくどい意味では人生応援していないこともないと言えます。でもそんな七面倒くさいこと考えなくてもこれを読んだらもう笑うしかないです。他人の出来ることは面白がって笑ってあげることくらいに思います。
本書の構成ですが、日記的な記録である「伝記」が前半と後半と二章分、その間に著者の偏った物の考え方に満ちてちょっとオトクなエッセイの章「コらム」、自分の愛車にまつわるエピソードの章「ヘレニズム」、そしてノンジャンルのようなナンセンスのような章「DADA」というものになっています。
なお、商品詳細については Rainy Day発売! を、ご注文の方は ご注文方法 をごらん下さい。
以下目次より
Chapter 1 伝記1
- カッコーの巣
- Taquo
- ファイトだ!一発!!
- パパ ヘミングウェイ
- ホテル
- オペ1 成人式
Chapter 2 コらム
- K‐2560000000
- ナビゲーションシステム
- ヒキコモル ヒキコモリ ヒキコモレ
- ローカルスタンダード
- 覚悟
- 廃墟
- 幽体離脱の勧め
- 牛肉偽装
Chapter 3 ヘレニズム
- 初代ヘレン
- さようなら初代ヘレン
- メタルヘレンが現れた
Chapter 4 DADA
- The Beetles 予告編
- メタルヘレン紀行
- 行商 渓流編
- The Beetles
- 麗兄的園芸
Chapter 5 伝記2
- ヒモとして
- 熊との遭遇
- ピアノ火葬
- クレーマー・クレーマー エリザベス5部作 パート1
- オブラディ・オダブラ エリザベス5部作 パート2
- スッパイダーマン
- オペ4 開眼
- のうがき
- 麗兄プロフィール
- 麗兄募金
- パラリセレナーデ
Posted by shoin45 on 2008/04/01
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